八子ヶ峰登山道から望む八ヶ岳連峰。雄大な裾野に圧倒される
初夏を迎え、いよいよ登山シーズン到来!
新緑萌える山道を抜け、頂上に立ったときの感動は格別。
この感動を気軽に味わえたなら、どんなに素晴らしいことだろう。
登山口から頂上まで徒歩約20分というショートコースでありながら、
目の覚めるような360度のパノラマビューが堪能できる八子ヶ峰(やしがみね)を紹介しよう。
頂上では、女神湖や北信濃の山並みも一望できる
登山道は、ハイキングコースとして整備されている
何と言っても登山の醍醐味は、山頂からの眺望。雨や曇りでは魅力が半減してしまう。その点、別荘にいると朝、天気を確認してから出掛けられるので、期待どおりに楽しめる。まさに“思い立ったが吉日”。朝陽が燦々と降り注ぐ初夏の休日、車でビーナスライン沿いの八子ヶ峰(やしがみね)登山口へ向かった。
ビーナスラインのビュースポットには展望台が点在している
新緑に包まれた蓼科高原では、爽快な高原ドライブが楽しめる
蓼科高原「チェルトの森」から上槻木の集落を抜け、八ヶ岳エコーラインを北上しビーナスラインへ。蓼科湖、プール平、ピラタスの丘を経由して、車で30分ほど走ると八子ヶ峰登山口が間近の「すずらん峠園地駐車場」に到達する。駐車場脇には蓼科山登山口もあり、最近、清潔なバイオトイレが備えられた。
八子ヶ峰登山口は、この駐車場の真向かいにある「女乃神茶屋」のすぐ横にあり、深い笹の中に標柱が立っている。
すずらん峠園地駐車場には、バイオトイレが設置されている
八子ヶ峰登山口の標柱。頂上を経由し白樺湖まで伸びている
萌える緑に包まれた登山道。淡い若葉の香りに包まれ、実に気持ちいい
八子ヶ峰を指す標柱に従い山道を進んでいくと、歩き始めは勾配のきついところもあるが、歩きやすいように道が整備されているので苦もなく登れる。
やわらかな萌黄色の新緑が頭上を覆い、森の息吹があふれんばかり。初夏の清々しい空気を全身に浴びながら歩く心地よさは、この季節ならでは。目にも鮮やかなシラカバの群生林、神々しいダケカンバの巨木など、遠い昔からこの地に根を下ろしている樹々たちは、自然の奥深さを教えてくれる。
深い森を歩くのもトレッキングの醍醐味
威風堂々と枝を広げるダケカンカバの巨樹
空を覆う原生林。大自然の懐に抱かれているような感覚が味わえる
15分ほど歩くと周囲を覆っていた樹木が姿を消し、視界が開け、東方向に雄大な八ヶ岳連峰の稜線が現れる。深い森に閉ざされていた眼前に、突如姿を見せた八ヶ岳の雄姿は実にドラマチック。山道を上るにつれ視界はさらに広がり、南方向に甲斐駒ヶ岳、北岳、鳳凰三山の南アルプスの山並が見えてくる。
森を抜けると視界が一気に広がり、八ヶ岳の絶景が出迎えてくれる
登山道から望む南アルプス、甲斐駒ヶ岳や北岳(富士山に次ぐ日本第二の高峰)がくっきり見える
ダイナミックな山々の遠望もさることながら、傍らに慎ましく咲く山野草も美しい。イワカガミ、スミレ、キジムシロなど、健気で可憐な花たちが、ほっと疲れを癒やしてくれる。
鐘形の淡紅色の花が特徴的なイワカガミ
清楚で上品な青紫色のスミレ
黄色の五弁花が鮮やかなミツバツチグリ
草原に伸びる道の先に、ヒュッテ・アルビレオの大きな三角屋根が見えてくると、もうすぐ八子ヶ峰の頂上。蓼科山が手の届きそうなほど間近に迫り、木曽駒ヶ岳をはじめとする中央アルプスが、雲の向こうにそびえている。
頂上間近になると、青空の下にヒュッテアルビレオの赤い屋根が見えてくる
鋭い三角屋根は天を貫くかのよう
八子ヶ峰東峰の山頂標識
諏訪盆地の彼方にそびえる木曽駒ヶ岳や宝剣岳をはじめとする中央アルプス
八子ヶ峰は三角錐のような独立峰ではなく、頂上周辺に草原が広がる大きなテーブル状の山で、最も標高が高いところでは1,869m。標高3,000m級の山々が連なる信州では決して高いとは言えないが、360度のパノラマビューは、2,000m以下とは思えない。しかも、登山口から約20分登っただけで、八ヶ岳連峰や日本アルプスの山並みを見晴らせる場所は、そうそうあるものじゃない。ロープウェイやリフトなどを使わず、自分の足だけで登るので達成感も味わえる。
天上界を散歩しているような感覚が味わえる広々とした八子ヶ峰頂上の草原
八子ヶ峰の頂上付近では、蓼科山の頂上がすぐ間近に迫っている
「チェルトの森」別荘地からすずらん峠園地駐車場まで車で約30分。登山口から頂上まで約20分。合わせて1時間ほどで別世界を体感できる八子ヶ峰。朝起きて天気が良かったら、さあ出発だ!